暮らしのロングライフ感覚とレストア志向

昔、ニュージーランドの不動産屋さんから一枚の絵をもらいました。
写真は頑丈な木造の家のスケッチ。長い風雪に耐えたとは思えない存在でした。
築80年弱の4LDK、およそ150平米の中庭付き平屋の家の絵です。バックヤードには作業小屋もあります。相当、年季の入ったウエザーボード(木を重ねた壁、半端なく分厚い)の柔らかいブルーのペンキ塗りの家です。しかし充分以上に快適です。
いま環境問題や暮らし方の再考が問われています。アパレル産業などが、多くの無駄を生み出す業界と言われ、そのあり方が見直されています。
こうした時、どこかに「古くて新しい概念」は無いかと、模索することがありました。
それは、英国など、伝統的スピリットが生きている国に多く存在しています。
生活、世代に合わせて家を変える
以前ブログで記しましたが、英国人は6人に1人が100年くらい前に建った家に住んでいるのです。
英国では自分の人生や暮らしに合わせて、家を借りかえたり、買いかえたりしています。ヤドカリが体に合わせて貝をかえるようなものですね。
一般に、家を壊すという無駄がありません。
どういうことから、こうなるのでしょうか。実は日本の家は資産価値が下がりやすいのです。あるいは手入れをしないで、弱りやすことも多いのです。(近頃は変わりましたが)
英国のタウンハウス。しっかり手入れで半永久の気分になります。
日本で木造住宅の減価償却は、22年で0円になります。だから売ってどこかに引っ越すにしても土地の価格だけしか入らない。解体費用も大変です。
イギリスでは減価償却はおよそ79年。不動産屋さんも事細かに、ドア、床、窓枠、その他をチェックします。しっかりしていれば価格は下がりません。
こうしたことから、人々もリフォームやDYIで資産価値を大切にします。
値が下がらないのです。自分でペインティングしりすることも少なくありません。
いま、住まいだけでなく、ロングライフやレトロ(復古調)感覚が大事にされています。
店もそうです。フォークグループ「ガロ」の「学生街の喫茶店」も耳になじんでいます。「きみとよくこの店にきたものさ~」1972年の歌ですが、心に沁み入っています。
神保町の古い喫茶店。学生時代、皆さん青春を過ごしました。
学生タウン。東京お茶の水・神保町には、まだその余韻が残っています。今でも青春時代の面影を残しています。
英国の現代に生きるレトロは以前も紹介した自動車。モーガンでしょう。1936年に今の形になりました。機械的には進化はしていますが表情は昔のままです。味を残しています。おまけに中味は木のボディーとなれば量産とは真逆です。
1936年に生まれた形を守っている現代の車。
Andrew Bone from Weymouth, England - 2012 Morgan during production, CC 表示 2.0, リンクによる
また、ヴィンテージカーを大事に乗り続けようと「ディテ―リング」という作業が注目されています。これは、内外装を徹底的に洗浄し、再調整し、もとのピカピカの状態を楽しむという概念です。自分が感じた青春の心の響。それを今でも味わいたい。そういう人々への新しいサービス・ビジネスです。
ピカピカのジャガーEタイプ。1960年代に大人気でした。いま3Rと言って、Rリデュース(減らす)Rリユース(繰り返しつかう)
Rリサイクル(再生利用)が社会的な課題になっています。
加えてRレストア(元の状態にもどす)もです。考えてみれば自然人という人間のスピードには、ほどほどが良いかと思います。もちろん進化は永遠に大事だと思います。皆様はどうですか?